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延命治療

2016年6月27日放送の「あさイチ」で「延命治療はイヤ!
そのとき家族は」がとりあげられました。

誰もが迎える人生最期の瞬間。
国の調査では、 高齢者の91%が、
延命治療を行わないでほしいと考えています。

ところが実際には家族の希望などによって
延命治療が50%以上、行われています。

番組アンケートからは、
親の希望どおりにしてあげたいと思う一方で、
1日でも長く生きてほしいと悩んだ経験のある人が
数多くいることが明らかになりました。

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延命治療の後悔

埼玉県熊谷市に住む橋本さんです。
8年前、母親をみとりました。
亡くなる直前の治療に関して今なお、
後悔の念を抱えています。

お母さんは76歳で、
すい臓がんの手術を受けました。

その後自分で食事がとれなくなり、
医師からは胃ろうが必要と告げられました。

実は、母親はすい臓がんと分かった時点で延命治療は、
してほしくないと橋本さんに伝えていました。

胃ろうをつけるのか。
それとも母の希望どおり、つけないのか。
父親と弟と話し合いました。

その結果 母親に、胃ろうをつけることに決めたのです。

胃ろうをつけましたが、次第に母親は自分で呼吸をすることも
難しくなっていきました。

医師からは人工呼吸器をつけることをすすめられました。
母親の気管を切開し人工呼吸器がつけられました。

橋本さんは、延命治療を望まない母親の希望と異なり
積極的な治療を行い続けたのです。

お母さんは人工呼吸器をつけてから
3週間後に息を引き取りました。

8年たった今でも橋本さんは、後悔し続けています。

橋本さんは「本人の希望より、家族の希望通りにしてしまった事。
母の人生を周りが変えてしまったという後悔。」などと語りました。

アンケート結果

今回NHKのネットクラブアンケート6715人の方から
回答をいただきました。

最期の医療を家族と話し合っていますかと尋ねました。
・話し合って意思を伝えている→36.4%
・話し合ったが意思は決めていない→8.6%
・これから話したい→40.2%
・これからも話すつもりはない→7.5%
・その他
という結果に。

話し合っている人話していない人
大体半々という結果でした。

林家三平さんの場合

林家三平さんは母親の香葉子さん(82歳)とは
ご飯と食べている時などにそのような話はしているそうです。

「私は昭和を生き抜いたから
もしもお迎えがきたんだったらそのままいきたい」といっているそうで、
三平さんは母親の意思を尊重したいとのこと。

また、胃ろうなども
もしそうなったら開けてほしくないということを言っていて
事細かに話し合いはできるだけ持つようにしているとのこと。

ネットクラブアンケートに答えた3割の人が、
延命治療の選択を迫られた事があると回答。

「母ががんで容体が急変し、人工呼吸器をつけることに。
会話できなくなりつらそうだった。
本当のところはどうだったのだろう」

「延命治療はしなかった。
自分が父を殺したのではないかと思う時がある」
などの意見。

秋野暢子さんの場合

秋野暢子さんはお母さんが
延命治療をしたくないという意思を尊重して
見送られたそです。

お母さんは彼女が60歳ぐらいのときに
尊厳死協会にも入っていて、
とにかくすべてのことはやめてくれと
胃ろうも嫌だし人工呼吸器も嫌、
体に管をつけられるのはやめてほしいと
ずっと言っていて、
78歳のときに、病院で亡くなるが、
そのとき病院の先生にもそのことをを伝えました。

母親が危篤状態になり、
先生から「延命治療をすればまだお母さんは大丈夫。
しかししなかったらあと1時間」と言われ、
母の人生を自分が決めてしまうのかとすごく悩んだそうです。
結局は母親の意思を尊重しました。

しかし「1年でも2年でもひょっとしたら
生きられたかもしれない。
もしかしたら回復したかもしれない」
などと、ものすごく後悔したとのこと。

秋野さんのように親の意思を聞いていてもいなくても
鍵を握ってくるのは残される家族の気持ち。

本人の希望を家族が納得するためには
何が必要なんでしょうか。

アドバンス・ケア・プランニングとは?

愛知県春日井市に住む大吉さん、フミ子さん夫妻です。

80歳のフミ子さんは腎不全や不整脈甲状腺にも持病があり
歩くのも一苦労です。

炊事や洗濯、掃除まで家事は
すべて夫の大吉さんが行っています。

フミ子さんは、もしもの場合延命治療は望まないと
夫に伝えています。

大吉さんは、フミ子さんの意思を尊重しながらも
できるだけ長く2人の生活を続けたいと願っています。

フミ子さんは人工透析を行うため、
週に3回春日井市民病院に通っています。

この病院が行っているのがアドバンス・ケア・プランニングと
呼ばれる取り組み。

回復が見込めなくなった場合延命治療を行うかどうか
などを事前に決めておくものです。

フミ子さんは担当の看護師と話し合いを重ね
延命治療をしないと決めました。

今も毎月その意思に変わりがないか
確認が行われています。

アドバンス・ケア・プランニングは、
本人だけでなく家族の思いを聞くことも
大切にしています。

大吉さんは初め、フミ子さんが延命治療を望んでいないことを
看護師から伝えられても向き合えませんでした。

ところが、あることをきっかけに大吉さんの心境に変化が現れました。
ことし1月。
同居する次男と3人で正月を迎えていたときのことです。

フミ子さんはトイレで倒れてしまったのです。
大吉さんは息子と一緒にフミ子さんをベッドに運びました。
しかし、フミ子さんの症状は治まる気配がありません。

大吉さんは、慌てて救急車を呼びました。

すると、苦しむフミ子さんから驚くべきひとことが。
「救急車を呼ぶな。」

フミ子さんは市民病院に運ばれ一命を取り留めました。
そのときの大吉さんのことばが記録されています。

「あのとき母さんは救急車呼ぶなって言ったよな…あれは堪えた。
びっくりした。母さんの気持ちを優先させないかん」。

それ以来、大吉さんは看護師に自分の気持ちを打ち明けるようになり
次第にフミ子さんの思いを尊重するようになりました。

大吉さんだけでなくほかの家族も納得する必要があります。

長男夫妻は、母親の意思を尊重することにしました。

ところが、同居している次男は反対でした。

フミ子さんは息子たちの気持ちを聞いたうえで
自分の思いを語りました。

何度話し合っても母親の気持ちが揺るがないと知った次男は
その希望を受け入れました。

話し合いを重ね、ことし2月、
フミ子さんの延命治療について方針がまとまりました。

回復できない場合、
心臓マッサージと点滴による水分補給は希望する。

一方、人工呼吸器や胃ろう鼻チューブによる栄養補給は
希望しないことを決めました。

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アドバンス・ケア・プランニングに詳しい三浦先生のお話

アドバンス・ケア・プランニングに詳しい老年医学が
専門の三浦久幸さんがゲストです。

有働アナ「本人が延命治療をしたくないと言っておられても
家族は1分1秒でも長く生きてほしいというご家族が多いんですね。」

三浦先生「最終的には、ご本人が意識がなくなってくるので
ご家族のことばが強くなってしまいます。

結果的に延命治療になってしまって
ご本人の意向どおりにいかなかったというケースは経験しています。

中には日頃、介護をしておられる長男さんとお嫁さんは
いよいよだからな、最期というふうに思っておられた一方で、
遠方に住むご家族が突然来られて、
いやいやもう少し積極的な治療をしてくれれば元気になるんだから
ということでまた延命治療になったりということもあります。

ご本人ではなくご家族にも納得しておいていただかないと
こういった本人の思いがかなえられないというケースが
増えるかと思います。」

有働アナ「臨床医15年のお医者様からのファックスです。
医師の立場では本人が亡くなったあとに
文句をいってくるのは家族なので本人より
家族を尊重しがちになるのはやむをえない感じがします
ということです。

ご本人が言っていたとしても家族の意向と
どっちをとるのかということですね。」

三浦先生「2種類あって、1つはご家族にお願いしているのは
本人だったらどう思いますかということを
考えていただくようにお願いしています。

本人の立場に立って、本人だったらどういうふうに語られますか
ということを伺って
その次にご家族としてはどういうご意向ですか
ということを伺っています。」

番組ではフミコさんの事前指示書をコピーが登場。

がんのときにモルヒネを使うのかどうかということや
延命のための人工呼吸器や胃ろうをどうするかということを
細かく指定できるようになっています。

三浦先生「最後に大事なのは、意思決定をする代理人を
指定しておくことです。
フミ子さんの場合は夫です。」

有働アナ「これは、お医者様は必ず守ってくれるものなんですか。」

三浦先生「この指示書は法的な拘束力はないので、
これを必ずそういうことはありません。

ただ、希望ということで厚生労働省が終末期医療のガイドラインで
本人の意向を最大限尊重しなさいということを出していますので
こういった書式があれば医療現場は大変助かります。」

柳澤「本人が意思を持っていても気持ちが変わることもあると思います。
一度作ったら変えられないというものではないんですか」。

三浦先生「 そんなことはありません。
何度でも変えられます。
人はやはり思いが変わります。

今、元気な間は何もしてほしくないと思っていても
病気をしてきて、いよいよ孫が子どもを産みそうだ、
ひ孫の顔が見られそうだというときに
ひ孫の顔が見られるまでは頑張りたいということで
延命治療に変わったり気持ちが変わったり
そのつど揺らぎがありますので
紙に残すということが重要というわけではなくて
そのつどの思いを医療者とかご家族と
話し合っておくということが大事だと思います。」

有働アナ「この場合は病院がはんこを押した事前指示書です。
どの病院でもはんこを押してくれるんですか。」

三浦先生「そんなことはありません。
こういった書式を使った活動しているのは、
全国でも数えるほどしかありません。
ただことしは200以上の医療機関で、こういったアドバンス・ケア・プランニングに
準じた研修を行うということになっています。
もう少し、増えてくると思います。」

柳澤アナ「書式がない病院で書いてほしい場合にはどうしたらいいですか。」

三浦先生「なかなか難しいです。
一般に出回っているものとかエンディングノートとか
そういったものを書かれて持ってこられる方もいらっしゃいます。

病院の方針によってはその書式の方針に従うこともあれば、
いつ書いたか分からないものに従うわけにはいかないということで
使えないというか、参考にするぐらいだったりとか。
それは医療機関の判断です。」

三輪アナ「アドバンス・ケア・プランニングを
やるかやらないかということで家族の影響も違いますか。」

三浦先生「国内ではそういうデータがまだないんですけれど
海外ですとアドバンス・ケア・プランニングをやらないで
亡くなった場合、家族の大体15%ぐらいが
うつ状態みたいになってしまいます。

アドバンス・ケア・プランニングを行った方のご遺族には、
うつ状態になることはなかったというデータがあります。」

自分で事前指示書を用意

評論家の樋口恵子さんです。
40年以上にわたり女性の生き方や老後の問題などについて
評論活動を行っています。

樋口さんは84歳。
もしもの場合延命治療を受けるかどうか考えを
明らかにしています。

樋口さんは、自分の希望を書面にしたためています。

樋口さん流の事前指示書です。
『私がもし、回復不可能な症状になりましたときは
苦痛除去の目的を除いては医療行為、外科手術気管切開、
経管栄養胃ろうなどを取らないでくださいますよう
お願い申し上げます』

書面には、長女だけでなく何人かの親しい知人にも
伝えてあることが記されています。

娘が病院に駆けつけられないときに備えてのことです。
それだけではありません。
樋口さんがいつも持ち歩いているという健康保険証の中にも。

『私、回復不可能意識不明の場合、
苦痛除去以外の延命治療は辞退いたします」。
日付に署名、印鑑まで押されています』。

樋口さんがここまで徹底しているのは、
かつてある後悔を経験したためです。
20年前、大学教授の夫が脳梗塞で倒れ
全身まひになりました。

夫は延命治療はしたくないと言っていましたが
樋口さんは鼻からの経管栄養や人工呼吸器などを
つけることにしました。

しかし、夫が延命治療を希望していないことを
改めて気付かされることがありました。

それは、医師から胃ろうをつけることを
提案されたときのことです。

夫に聞くが、あまりはっきりとうなづかないため
夜中の宿直の婦長さんに来てもらったところ「NO」
の意思表示があったそうです。

先生には「夫は胃ろうをしたくないといっているのでお断りします」と
伝えたとのこと。

最初から夫の希望どおりにさせてあげたかった。

樋口さんはその経験から、
ことばだけでなく書面に残しておくことが大切だと考えています。

三輪アナ「病院から出しているものだけではなくて
ポイントを抑えれば自分で作ることもできます。
病院が関わる事前指示書と同じような効力はありますか。」

三浦先生「それはあると思います。
日付とご本人の署名があって内容がしっかりしていれば
問題はないと思います。

代理人の指定も必要ですよね。
代理人も大事です。

最後に意識がなくなる方が多いんですので、
そのときに話を伺うのは家族を含めての代理人ですので
誰に話を聞いてほしいかということを書いておいていただくと
非常に助かります。

多くのご家族で意見が一致するというわけではないので
誰に話を聞いてほしいのか代表者を決めとくということですね。
勝手に指名するのではなくて
その人との話し合いも必要ですよね。」

延命治療について、ファックスより

有働アナ「医療現場で働いているという方からのファックスです。
延命治療イコール胃ろうという考え方には疑問を持ちます。

胃ろうで命が保たれることもあります。
しっかり報道してくださいといただきました。

それから、逆にいったん延命治療を始めると
なかなか中止させてもらえないと聞いたことがあります。
実際の現場では、どうなんでしょうかということです。

三浦先生「胃ろうの誤解が大きいかなと思います。

胃ろうイコール延命治療という形になっていますけれど
そういうわけではなくて脳梗塞を起こされて
飲み込みが一時的に悪くなったんだけれど
十分な栄養をつけて治療をすれば
早く飲み込みがよくなるという場合、
積極的に胃ろうを使ったほうがいい場合もあります。

治療としての胃ろうということを十分やっていますので
胃ろうが延命ということは少し誤解があると思います。
胃ろうが必要なくなる方もいらっしゃいます。

がんが進行していよいよという方、
認知症が進行してよいという方に
胃ろうは延命ということになる可能性が高いかと思います。」

有働アナ「延命治療はなかなか中止できないということはどうですか?」

三浦先生「状態が落ち着いているときに、
胃ろうをやっているかぎりは何年も安定した状態で保てるという方に
わざわざ胃ろうをやめるかというとそれは難しいですね。

ですから法律がどうか倫理がどうとかというよりも
人間として中止するという行為が難しいですね。」

有働アナ「延命治療を話し合いたいという方が
注意点があれば教えてくださいといただいています。」

三浦先生「やはり専門知識を持った医療者を交えて
話し合うということが大事だと思います。」

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